ハイフン


ハイフンには主な用法が2つあります。ここでは、まずそれら2つの用法を個別に扱い、次に特殊な用法をいくつか示し、最後によく見られる誤用例を取り上げます。

1. 接頭辞との併用

接頭辞の後に語幹が組み合わさった語、つまり「[接頭辞]+[語根]」という構造を持つ語は多く存在します。その中でも接頭辞と語根の間にハイフンが挟まれる語は、決して一般的ではありませんが、多数存在します。英語の「センス」でハイフンの必要性の有無が理解できる場合もありますが、ハイフンを入れるか入れないかについては厳密な規定はなく、同類の語でもハイフンを使う場合と使わない場合があり、区別の基準が明らかでないことも多いのです。そうした場合、ハイフンは慣例的に用いられることとなり、その慣例が時間とともに変わることもよく見られます。



したがって、それぞれの場合において確実にハイフンの正しい用法を判断するためには現代の辞書を調べるしか方法がありません。しかし、ハイフンがほぼ確実に必要なケースもいくつかあり、以下がその代表的な例となります。

[1] 接頭辞の最後の文字と語根の最初の文字が同じ母音

例:「re-examine」、「anti-intellectual」、「ultra-advanced」、「semi-infinite」

[2] 使用頻度が低い言葉(特に辞書に載っていない語)

例:「semi-colonial」、「non-descending」、「post-interdisciplinary」、「quasi-differentiable」

[3] 語根が大文字から始まる

例:「non-Japanese」、「pseudo-Keynesian」、「inter-European」、「post-Einstein」

[4] ハイフンがないと別の言葉と混同される

例:「re-charge」(再請求する)、「pre-sent」(事前に発送した)、「set-up」(組み立て)、「pre-occupation」(占領前)

[5] 接頭辞が「self-」の語

例:「self-appointed」、「self-explanatory」、「self-analysis」

[6] 接頭辞が「ill-」の語

例:「ill-founded」、「ill-conceived」、「ill-equipped」、「ill-defined」

2. 2語を結ぶ用法

英語では複数の単語がひとつのまとまった意味の単位として用いられることがよくあります。そのような語句が文法的かつ意味的な単位として機能していることを明確に示すため、ハイフンによって構成単語どうしをつなぐのが原則です。この用法においては2つのパターンが挙げられます。文法的にどのような役割を果たしていても構成単語がひとつのまとまった意味の単位として機能する語句、そして構成単語がセットとして名詞を修飾する場合にのみひとつのまとまった意味の単位として機能する語句があります。前者のタイプを代表するものとしては以下の複合語が挙げられます。

[形容詞]

well-defined、self-evident、user-driven、mind-expanding、computer-aided、old-fashioned

[名詞]

no-hitter、editor-in-chief、run-up、set-up、run-around、Irish-American、passer-by

[動詞]

second-guess、double-check、window-shop、peer-review、force-feed、fine-tune

なお、後者の場合はさまざまなケースが想定されます。以下の例文中の表現はその典型例です。

(1) Next we consider the large-scale structure.

(2) The so-called L-L conjecture is investigated below.

(3) Here, the time-dependent terms have been ignored.

(4) But the situation regarding the long-range interaction is much different.

(5) This is a third-order calculation.

(6) In this case, the signal-to-noise ratio is too small.

(7) These are five-nation talks carried out biannually.

(8) They walked down the six-mile path.

(9) Under normal conditions, their scales have a light blue-green tint.

(10) These are the first- and second-order solutions.

(11) This system exhibits low-frequency pressure oscillations.

上記の例文に関してもっとも留意していただきたい点は、ハイフンによって複合語となるものは必ず文法的な単位として機能するということです。それゆえ、たとえば形容詞とそれに修飾される名詞がハイフンで結ばれることはありません。よって、(2)では「so-called-L-L」ではなく「so-called L-L」、(11)では「low-frequency-pressure」ではなく「low-frequency pressure」、となるのです。

3. その他の用法

ここまで述べてきたのはハイフンの主な用法です。それらに加えて特殊な用法がいくつかあり、以下にもっともよく見られる例を示します。

(i) 1つの文字と単語を組み合わせるため

X-ray、U-turn、three-D

(ii) 数字と単語、数字と文字を組み合わせるため

2-fold、10-fold、100-fold(twofold、tenfold、hundredfoldと比較せよ)

4-plex、3-D、1-dodecanol、2,3-diphosphoglycerate、pre-1920


(ii) 曖昧さの回避のため

great-grandmother



(ii) 21〜99までの数字を文字によって表示するため

sixty-eight(eighteen、six hundred、ten thousandなどとの違いに注意)



(iii) 分数を表すため

two-thirds, three-fourths

4. よく見られる誤り

ハイフンの用法に関する典型的な誤用例を以下に挙げます。

(i) [誤] We treat highly-complex structure.

理由:副詞と形容詞は一般的にハイフンで結ばないから。

修正法:ハイフンを削除する。

(ii) [誤] They prove a very well-known theorem.

理由:ハイフンを入れると「very」が「well-known」全体を修飾してしまうが、本来は「well」のみを修飾すべきであるから。

修正法:ハイフンを削除する。

(iii) [誤] This structure is two-dimensional.

理由:ここで「two-dimensional」は名詞の前に位置していないから。

修正法:ハイフンを削除する。

(iv) [誤] This is a long term project.

理由:「long term」が「project」の直前に位置しているから。

修正法:ハイフンを加え「long-term」にする。

(v) [誤] These figures are up-to-date.

理由:ここで「up-to-date」は名詞の前に位置していないから。

修正法:ハイフンを削除する。

(vi) [誤] The values drop-off rapidly just beyond the critical point.

理由:句動詞はハイフンを含まないから。

修正法:ハイフンを削除する。

(vii) [誤] There is a sharp drop off just beyond the critical point.

理由:句動詞から形成される名詞の場合はハイフンを含むから。

修正法:ハイフンを加え「drop-off」にする。


Dr. Paquetteグレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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