ジャーナル査読者になるチャンスは誰にでも平等か
2020-10-06

ジャーナル査読者になるチャンスは誰にでも平等か

学術雑誌(ジャーナル)の査読(ピアレビュー)は学術出版の要です。査読とは、投稿された論文を同分野の専門家が評価・検証を行うことで、この査読を通過できた論文のみがジャーナルに掲載されることになります。 よって、誰もが査読者になれるわけではなく、ジャーナルの編集者によって選出・依頼されます。一般的には投稿論文のテーマに沿った関連分野で活躍している研究者が選ばれるわけですが、査読を引き受けたら、投稿論文を読んで品質を確認し、必要な場合にはアドバイスを提供しなければなりません。査読者が担う作業としては以下が挙げられますが、査読者の役割や選出の方法を公開している出版社もあるので、それらも参考になります。

投稿原稿がリジェクトされる一般的な理由
2020-01-16

投稿原稿がリジェクトされる一般的な理由

研究者は、自らの研究成果を少しでもインパクトの高い学術雑誌(ジャーナル)に投稿しようと日々研鑽を重ねています。しかし、論文出版には困難が伴い、せっかく投稿した論文が却下(リジェクト)されることも少なくありません。多くの研究者がキャリアの中で一度はリジェクトを経験し、失敗から学んだ経験を次の論文投稿に生かしていることでしょう。今回は、一般的にリジェクトにされる12の理由と注意すべき点について考えてみます。1. 内容とタイトルのミスマッチタイトルは論文内容にあったものにします。タイトルで論文の内容を適切に示せていないと読者の興味を引けないだけでなく、論文の検索にも影響します。また、ジャーナルの投稿

査読レポートの公表は査読に影響するか?
2019-07-01

査読レポートの公表は査読に影響するか?

研究者が実績を積み、経歴を高めていくために、論文の発表は必須です。しかし、論文を発表するには、査読プロセスで採択されなければなりません。査読の結果、学術雑誌(ジャーナル)の編集部がどのように掲載論文を選定しているのか疑問を感じている研究者が多かったことから、一部のジャーナルは査読の結果を「査読レポート」として公表することで応えています。査読レポートは、査読の依頼を受けた研究者が、専門家の立場から投稿論文に対する意見や所見を示すもので、編集部が該当論文を出版するかどうかの判定を左右します。編集部が査読レポートを著者に送り、必要な修正を求めることもありますが、通常は非公開とされてきた査読レポートを

建設的な査読者になるためのポイント5選
2018-10-01

建設的な査読者になるためのポイント5選

査読は論文と学術雑誌(ジャーナル)の質を保証するためのきわめて重要なプロセスです。査読の目的は、著者に対して論文の採択可否とその根拠をコメント・論評の形式で提供することにあります。慎重に考察し、明解で建設的、かつ親しみやすいフィードバックができると、著者の研究の質を高め、独自性を保証する手助けになり、何よりも著者のキャリアアップにもつながります。ここでは、著者にとって有益なフィードバックをするためのポイントを5つご紹介します。1. 丁寧に伝えるまず、査読を行う上での大前提として、著者には論文を意欲的に執筆してもらう必要があります。研究者は、自分の書いた論文に対する有益なフィードバックと適正な評

著者は査読者による「バイアス(偏見)」を恐れている
2018-02-28

著者は査読者による「バイアス(偏見)」を恐れている

本誌で以前にお伝えしたように、ジャーナル(学術雑誌)で行われる 査読 には次の3種類があります。「片側盲検査読(single blind peer review)」では、査読者の側からは著者が誰かわかりますが、著者の側からは査読者は誰かわかりません。「二重盲検(double blind peer review)」では、著者も査読者もお互いが誰かわからないまま査読します。3種類目は「オープン査読(open peer review)」です。一部で試み始められているこの方法では、前回報告したように、著者も査読者もお互いが誰かをわかったうえで査読を行ないます。 学術出版大手シュプリンガー・ネイチャー社

査読結果や査読者名を公開すべきか?
2018-02-19

査読結果や査読者名を公開すべきか?

ジャーナル(学術雑誌)における査読は、一般的には匿名で行われます。しかしながら本誌では以前、著者も査読者もお互いが誰であるかを明らかにして行う「オープン査読」でも、査読の質は下がらない、という研究結果を紹介したことがあります。 また現状の査読は不透明であり、バイアス(偏り)を伴いがちで、非効率であることも指摘され続けています。ある科学者が「査読を科学的なものにしよう」と提言したことを、本誌が紹介したこともあります。 査読の改善を図ろうとしばしば提言されることが「査読のオープン化」です。ただ査読のオープン化といっても、さまざまなものがあります。たとえば上述の「オープン査読」です。また、論文の公表

学術界にはびこるジェンダーバイアス
2017-12-22

学術界にはびこるジェンダーバイアス

残念なことに、学術界には今も性差別(ジェンダーバイアス)が存在し、女性研究者の活躍に影響をおよぼしているというのは周知の事実です。学術ジャーナルで発表する論文数の比較では、女性研究者の論文数は、男性研究者の数よりかなり少ない状況です。研究職に就くにも、女性は男性に比べてハードルが高く、報酬も少なく、職を得た後も研究に従事するより管理業務を任される傾向にあるといわれています。 多様性が求められているはずの学術界でジェンダーバイアスが存在し、女性が過小評価されているとは、どういうことなのでしょうか。■ 査読にジェンダーバイアスは存在するか 通常、投稿された研究論文は、学術誌に掲載される前に、その分

オンライン査読システムが査読を変える?
2017-10-24

オンライン査読システムが査読を変える?

ドイツのシュツットガルトに本社を置く医学・薬学・化学関連学術出版社のThieme社。彼らは化学誌Synlettの中で、査読のプロセスを早め、公平性を向上させるための「新しい査読システム」の試験運用で、好結果が得られたことを公表しました。Synlettの編集長Benjamin List氏(マックス・プランク石炭研究所)と彼の研究生Denis Höflerは、この新しい方法を「インテリジェント・クラウド」査読システムと名付けています。研究論文の査読をオンライン上で行えるようにするという試みが始まっているのです。■ 査読を速く、より信頼できるものに 2016年にSynlettが行った新システムの試験

2030年の査読はどうなるか?
2017-06-28

2030年の査読はどうなるか?

研究成果を論文にして発表し、成果を示したい研究者にとって、論文の査読は避けられない関門です。しかし、査読システムはスピード(時間がかかる)、公平性(専門分野が同じ競合相手の審査へのバイアス)、信頼性(捏造や剽窃などの不正を見抜けない)などの問題を抱えています。最近ではオープンアクセスの拡大に伴い、査読前の原稿(プレプリント)を公開する研究者が増えているものの、査読の必要性は広く認識されており、査読システムの改善が求められています。実際、近年の学術出版界は大きな変革の波にさらされています。そんな中、査読システムはどのように変わっていくのか?5月にBioMed Central社とDigital S

編集者は同性の査読者を選びがち!?
2017-04-28

編集者は同性の査読者を選びがち!?

学術界にも、残念ながら一般社会と同じく、あちこちにジェンダーバイアス(男女間の偏り)があります。もっといえば、女性差別があるといっても過言ではないでしょう。 たとえば、少し前の『ネイチャー・ニュース』(2016年10月3日付)によれば、全米科学財団の調査で、アメリカではSTEM(科学、技術、工学、数学)分野において、博士号すべてのうち41パーセントを女性が取得している一方、2012年から13年にかけて連邦予算を使う研究所や研究室にいたポスドク研究員のうち女性はわずか24パーセントであることがわかったといいます。 また、エルゼビア社が2017年に公表した報告書『世界の研究環境におけるジェンダー(

科学を最も蝕んでいるのは「科学的詐欺」ではない!?
2017-01-24

科学を最も蝕んでいるのは「科学的詐欺」ではない!?

国内外で研究不正事件が発覚し続けています。「研究不正(研究活動における不正行為)」にもいろいろあるのですが、よく問題になるのは、存在しないデータをでっち上げる「捏造(Fabrication)」、データを都合よくねじ曲げる「改ざん(Falsification)」、他者のアイディアや文章を不適切に使用する「盗用(Plagiarism)」の3種類です。これらはその頭文字から「FFP」と呼ばれます。「科学的詐欺(scientific fraud)」と呼ばれることもあります。 しかし、研究者たちがFFP=科学的詐欺よりももっと深刻だと考えているのは、むしろ「 お粗末な科学 (Sloppy science

査読 システムに限界、基準劣化のおそれ
2017-01-06

査読 システムに限界、基準劣化のおそれ

生物医学のニュースサイト『STAT』は読者にこう問いかけます。「ゴジラと査読に共通するものは何か? どちらも必然的に自分の体重で崩壊してしまうはずだということだ。しかしどういうわけか、どちらも立っている」。『ネイチャー』によれば、すでに2010年の研究で、「査読システムは崩壊しており、まもなく危機に陥るだろう」と指摘されていたといいます。 しかし今年11月10日に『プロスワン』で公表された新しい研究によれば、今のところ査読者の数は、生物医学分野で毎年公表される膨大な数の新しい論文に間に合っている、といいます。論文は毎年100万件以上公表されており、しかも増加しています。 フランス国立衛生医学研

査読レポート の公開に肯定的な声は多数
2016-12-09

査読レポート の公開に肯定的な声は多数

研究者は論文を公表したいとき、自分の研究結果を原稿にまとめ、ジャーナル(学術雑誌)に投稿します。ジャーナルの編集部はその原稿を、近い分野の専門家に送って、掲載する価値があるかどうか、「査読」を依頼します。査読を引き受けた専門家=査読者は、その原稿を読み、データの不足など問題点をチェックし、文書にまとめて編集部に送り返します。編集者はその文書を著者に送り、修正などを求めます(査読者は通常、匿名です)。その文書のことを「査読レポート」または「査読者レポート」といいます。著者は、査読レポートに書かれた査読者の指摘をクリアし、原稿をまとめ直すことができたら、その新しい原稿は論文としてそのジャーナルに掲

査読の歴史 − 査読を科学的なものにしよう!
2016-08-22

査読の歴史 − 査読を科学的なものにしよう!

7月5日、『ネイチャー』は「査読を科学的なものにしよう!」という過激なタイトルの論評を掲載しました。そう主張するということは、査読の現状は科学的なものではない、と著者は考えているのでしょう。著者のドラムンド・レニーは「世界医学編集者連盟」の元会長で、『ニューイングランド医学雑誌』の副編集長などいわゆるトップジャーナルの要職を務めてきた人物です。 『ネイチャー』は科学の雑誌です。『ニューイングランド医学雑誌』も医学という科学の雑誌です。どちらも科学論文が載る雑誌です。その科学論文の査読が科学的ではない、というのはどういうことでしょうか? この論評は冒頭からいささか挑発的です。査読は、科学の自己批

査読は匿名かオープン、どちらが質が高い?
2016-04-26

査読は匿名かオープン、どちらが質が高い?

「片側盲検(single blind)」では、査読者の側からは著者が誰かわかりますが、著者の側からは査読者は誰かわかりません。「オープン査読(open peer review)」では、著者も査読者もお互いが誰かをわかったうえで査読が行なわれます。「二重盲検(double blind)」では、著者も査読者もお互いが誰かわからないまま査読します。 一般的に、片側査読もしくは二重査読を適用しているジャーナルがほとんどで、オープン査読が採用され始めたのは比較的最近のことです。査読者の数は通常、2~3人です。ジャーナルのなかには、採択された論文といっしょに査読者レポート(reviewer report)

研究論文が却下される10の理由 (4)
2015-07-02

研究論文が却下される10の理由 (4)

論文が却下される10大理由を考えてきましたが、今回はその最終回。英語を母国語としない私たちにとって、最も大きな落とし穴について考えてみたいと思います。9. 言いたいことが飛び飛びになっていて読みづらい著者の言いたいことが飛び飛びに書かれていて、結果として読みにくい文章になってしまうことは、英語が母国語でない私たちにとっては最も厄介な問題です。日本語と英語では「論理のつなげ方」が違いますので、日本語では筋が通った明確な文章も、英語に直訳すると読みづらく感じられます。これに、略語の多用や、日本の学術界の常識と海外の学術界の常識とのくい違いなどが加わると、説明が必要なことが省略されてしまったり、逆に

お高い掲載却下率に打ち勝つためには?(2)
2015-07-02

お高い掲載却下率に打ち勝つためには?(2)

お高い却下(リジェクト)率に打ち勝つための裏技の第2回です。前回は、投稿数を増やすことを目標に話をしましたが、今回は査読者の心を揺さぶる心理攻撃のお話です。「科学の世界にあるまじき……」などと固いことはいわずに、この意外に効果的な方法を有効活用してください。1. 知り合いの輪を広げる やはり知っている人の論文を査読するときには、通常より真剣になるものです。学会に足しげく通って、いろいろな人に自分の研究について知ってもらいましょう。 「ああ、これは去年の学会で隣に座った人がやっているといっていた研究だ」。そう思ってもらうだけで、「適当に読んで適当に掲載が却下される」といったことはなくなるでしょう

お高い掲載却下率に打ち勝つためには? (1)
2015-06-30

お高い掲載却下率に打ち勝つためには? (1)

「論文をジャーナルに掲載してもらうには、どうしたらよいですか?」と聞かれれば、その答えはおおむね、以下の3つとなるでしょう。 ①よい研究をする ②英作文が上達するように努力する ③論文の書き方をマスターする しかし、これらは誰もがしていること。ほかの人より抜き出るためには何をしたらよいのでしょうか? 高い却下(リジェクト)率に打ち勝つために、これから2回に分けて裏技をご紹介します。1. 上等な鉄砲でも打たなければ当たらない とりあえず、「いつも査読中の論文がある」状態を保ちましょう。 現職を維持するために特定数以上の論文を出版する必要がある方は、とくに気をつけてください。無我夢中で頑張るのでは

よくある「却下(リジェクト)」のシナリオ
2015-06-23

よくある「却下(リジェクト)」のシナリオ

論文がジャーナルに掲載されるまで、通常、平均2回は却下されるといわれます。今回は、ジャーナル編集部でよく聞かれる愚痴をあげ、その対応策を考えてみました。投稿する前の自分の論文を編集者の目で見ることができ、それに応じて原稿を作成することができれば、それだけ掲載のチャンスが高くなるのではないでしょうか?1. 編集者の怒り 「メールの件名欄に研究者の名前を書く」とか、「1ページ目に研究者の名前と論文のタイトルを書き、論文自体には研究者の名前を書かない」とか、投稿規程はそんなに難しいものじゃないのに……。自分がちょっと楽をしたいからって、簡単な規程にも従わないで論文を送りつけてきて! 毎日何十も投稿論

査読は、論文執筆の練習になりますか?
2015-06-18

査読は、論文執筆の練習になりますか?

なります! 論文執筆のスキルを上達させたいと思うならば、出版された一流の論文を読んで、上手な表現と頻繁に接することが必要不可欠です。しかし、内容を把握しながら英語の勉強をするのは難しいことですし、注意しているつもりでも、案外と感心しながら読むだけで終わってしまうものです。 そこで、とくに英語の論文を1つでも出版したことのある方には、論文を書く練習として、ほかの人の論文を査読してあげることをお勧めします。一読者として論文を読むと、どうしても「自分の研究に役立つ情報があるか?」とか、「自分の興味を惹くか?」といった個人的な基準で論文の善し悪しを判断しがちです。しかし、査読者として論文を読むとなると

拝啓 査読者様 ~査読コメントへの返事の書き方~
2015-06-16

拝啓 査読者様 ~査読コメントへの返事の書き方~

「よい論文の書き方」を解説する本やウェブサイトは数多くありますが、「査読者のコメントに対するよい返事の書き方」が説明されているものはなかなか見当たりません。しかし、論文の掲載が決まったにせよ、却下されたにせよ、その報告を受け取ったときには、大人の研究者としてきちんと返事を書きたいものです。ここでは、最も大切なキーポイントを3つ挙げてみたいと思います。1. どんなコメントも、批判・批評としてとらえず、査読者の懸念・関心事としてとらえる 自分の論文が却下されたときだけでなく、ちょっとしたコメントでも、査読者の書き方次第では、かなり傷つくこともあります。そんなときにはグッと我慢が必要です! どんない

新しいタイプの査読
2015-05-18

新しいタイプの査読

一般的な査読誌(査読のあるジャーナル)では、編集委員会が事前に選出した功績のある研究者たちから、投稿されてきた論文1つひとつに適した研究者が数名ずつ選ばれ、論文の査読(ピアレビュー、Peer-Review)が行われます。この方法は、ジャーナルに掲載される論文の品質向上や品質管理に欠かせないものと考えられてきました。しかし、これまで行われてきたこの査読という制度について、その過程に費やされる時間やコストの上昇、また出版後に研究者間で意見の交換をする場がないことなど、さまざまな欠点が指摘されており、新しい方法を開拓しようという動きが見られます。そこでこの記事では、新しい査読方法をいくつか取り上げて

論文の ピアレビュー (査読)レポートとは?
2015-05-16

論文の ピアレビュー (査読)レポートとは?

昨今、研究論文の書き方を解説するガイドブックはたくさん出版されていますが、査読レポートの書き方に関しては、まだまだあまりよく知られていません。そこで今回は、査読レポートを書くときの注意点をまとめてみました。まだ査読を依頼されたことのない人も、「自分には関係ない!」などといわずにご一読ください。ときとして査読者は、投稿論文とジャーナル編集部を結ぶ唯一の「点」となりえます。査読者からジャーナル掲載の推薦を得るためも、自分の論文がどのように評価されていくのかをよく理解するチャンスです。1. 書き出しには必要事項を忘れずに 自分の名前およびメールアドレスとともに、査読をしている論文のタイトルと著者名も

査読者の苦悩
2015-05-16

査読者の苦悩

国際的に認められた学会誌の査読者になるのは大変なことですが、その任務を全うするのはもっとたいへんなことです。自分の研究や家庭のこともあり、無償の査読の仕事が二の次になることもあるでしょう。ジャーナルの編集者のなかには、査読者が「もうすぐ終わるから」といい続けたため、他の査読者に依頼することもできず、半年以上もズルズルと査読作業が長引き、投稿してきた研究者には怒られ・・・という痛い思いをした人もいます。このようなことがないようにするためにも、いったん査読を引き受けたら、不必要な負担がかからないよう、気をつけましょう。 査読作業にはとくにマニュアルがあるわけではなく、自分に適した方法を作り出してい